わんわん電鉄

好きな音楽は、鉄道の路線網のように広がっていくものだと思う

【考察・解釈】スピッツ『快速』 ※少々の"鉄道"要素あり!

『快速』は、アルバム『見っけ』に収録されています。  

快速

快速

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このアルバム『見っけ』の中で、『快速』は1、2を争うほど好きな曲です。(ちなみに争っている曲は、『ヤマブキ』です。)

イントロの透明感といい、曲全体の疾走感と言い、メロディーの気持ちよさと言い、ベースの効き具合といい…どこをとっても素晴らしく、また私の好みにマッチするんです。初めてアルバム『見っけ』を聴いたときの感動は、いまだ忘れられません。

 

 

ということで、本記事では、『快速』の歌詞を考察、解釈していくとともに、メロディー(音の雰囲気)について、多少"鉄道"を意識したコメントをしていきたいと思います。

 

 

鉄道について、生半可な知識しか持っていない私ですので、「これ違うんじゃない?」「これおかしくない?」と思われる部分もあるかと思いますが、どうか温かい目でみてくださるとありがたいです。

 

 

 

この曲の歌詞にある、「流線形のあいつ」とは何なのかということを考察した記事をすでに掲載しておりますので、もしよろしければそちらもご覧いただけると嬉しいです。

↓記事はこちら

 

 

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流れるような美しい女性の声から、この曲は始まります。晴れた日の朝の、少し薄くかかっている雲のような声(なめらか)ですね。

同時にバックで響いているリフもまたいいですよね。Aメロが、ドンッと重厚な音で始まるということを踏まえると、このリフはそれに向かって助走するような感じがします。

 

流れるようなリフに、声に…とにかくさわやかな朝のイメージが湧きます。

 

 

 

無数の営みのライトが瞬き もどかしい加速を知る

速く速く 流線形のあいつより速く

すすけてる森の向こうまで

 Aメロの入りがいいですよね。言葉では表現しがたいですが、ドゥクドゥン!みたいな感じで、重厚な音でAメロに入ります。これまでの滑らかでしなやかな雰囲気を断ち切って、力強く、直線的で骨太な雰囲気になりますね。

 

 

自明のことかもしれませんが、この曲の主人公は、電車(おそらく気動車ではないと思います…「流線型のあいつ」より速く走れそうな気動車ってあるのでしょうか…?)に乗車していると思います。

 

 

「無数の営みのライト」とは、沿線の住宅や店舗の照明のことだと思います。それらの建物の中では、人々は"営んでいる"わけですし、また"営んでいる"からこそ、灯りが必要なわけですよね。この表現はすごく的確だなと思いました。

「ライトが瞬」くということは、主人公は夜の電車に乗っているのでしょうか。続く歌詞を考慮すると、夕方かなと思っています。

 

 

 

「もどかしい加速」とは、車両が加速しかけたかと思いきや、惰性走行するために、なかなか速くならないなと感じるということでしょうか。

最近の鉄道車両の運転は、ワンハンドルマスコン(マスターコントローラー)で速度を調整しながら行っています。

これはブレーキハンドルとマスコンハンドルを一体化させ、一本のハンドルで運転操作が行えるようにしたもので、ワンハンドル・マスコンと呼ばれています。ハンドルはT字形、もしくは逆L字形で、手前に引くと加速、前方に押し倒すとブレーキが作用し、そのハンドルの角度で強弱を調整する仕組みになっています。

 

昔は、ブレーキとマスコンが別々だったために、運転には技術が必要でした。

私もとある鉄道博物館で、運転体験をしたことがありますが、やはりブレーキとマスコンが別々だと、頭が混乱してよくわからないことになります。(もちろん素人だということもありますが…)しかも、ハンドルを回転させるような感じで操作するので、ますます難しく感じます。

 

ワンハンドルマスコンならば、前後に倒すだけでブレーキと加速の両方を行うことができるので、誰にとっても分かりやすい操作方法になっていると感じます。やはり、直線的な動きというのは、わかりやすいものですね。

 

 

ワンハンドルマスコンとはどのようなものか、と疑問を持たれた方は、是非検索なさってみてください。手持ちの写真がない上、鉄道各社の公式HPからもわかりやすい写真を見つけ出せずにいます…。

 

 

 

ワンハンドルマスコンの運転体験を行うと、機械に、大体100キロくらい加速したところで、マスコンを0のところに戻して惰性走行するように指示されます。

 

このような感じで、走行区間によって最高速度は異なってきますが、規定された速度に到達すると惰性走行に入るようになります。もちろん傾斜(登り)があるために、その都度加速することもあります。つまりは微調整に入るということですね。

 

 

話はだいぶそれてしまいましたが、「もどかしい加速」とは、こういうことを指すのかなと思いました。自分自身の気持ちが急いているがゆえに、電車の速度が遅く感じられる上に、加速すらももどかしく感じるということです。

駅間が離れていれば、それなりに加速しますが、首都圏によくあるように、駅間が1分~2分くらいの距離しかない場合は、あまり加速していないように感じられます。

とにかく速く、速くいきたいので、急加速、急減速してくれぃ!という感じがします。

 

 

 

 

「速く」という言葉を3回も使っているくらいですから、よっぽど「速く」行きたいのでしょうね。しかも、速度としては「流線型のあいつより速く」とのことです。これ相当早いと思います。首都圏在来線で、新幹線と並行して線路を走る(並走とはいかなくても、すぐ近くを走る)電車で考えてみようと思います。

 

 

例えば、JR東日本埼京線は、高架区間では、最高時速100Kmを出すことができるそうです。そこを並走する新幹線は、最高時速110km(在来線区間)となっていますので、新幹線が最高速度を出さなければ、十分に新幹線と並走することは可能だと思います。

参考: 

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%A7%8B%E7%94%B0%E6%96%B0%E5%B9%B9%E7%B7%9A

https://www.jreast.co.jp/youran/pdf/2017-2018/jre_youran_group_p21-26.pdf

 

 

ただやはり、新幹線を追い越しすまでの加速が可能かと問われたら、難しそうですね…。もし、「流線型のあいつ」が、普通の(流線型の)特急列車だったら、まだ勝ち目はあったかもしれませんが…。

ともかく、新幹線は在来線区間では、300キロ近い最高速度で走ることはないので、並んで走って、だんだん追い抜かされるというイメージでしょうか。

 

 

 

「すすけてる森」とはどんなものでしょうか。すすけるの意味は、煤ける、つまり煤がついて黒く汚れている様子をさすわけですが、汚れている森なのでしょうか。

私はてっきり、透けている森、つまり透明感のある言葉のイメージで、森を通してでも遠くの目的地(「向こう」)が見えるくらい、木々に隙間があるという森をイメージしていました。

 

 

この後に、力強く響く音が、ジャンジャンジャン、というか、ダンダンダンと入ります。この音が、個人的にどうしても、マスコンハンドルを手前に倒すとき(加速)の効果音に聞こえてしまうのです。

実際のマスコンハンドルを倒す音は、グキっ?ガキッ?みたいな音なんですけれど、本当は、この力強い、それこそ前進しようとする力が感じられるギター?ベース?音のほうが合うのではないかと思っています。

 

ともかく、この部分は、さらに加速を強めていくというイメージを彷彿させる音だと思っています。

 

 

 

 

記録に残らない 独自のストーリーだって

たまに忘れそうになるけど

県境越えたら 君の街が見えて

細長い深呼吸をひとつ

「記録に残らない独自のストーリー」とは、世間から認められ、公の記録として残るとうことはなかったけれど、自分の中では重要なできごとのことを指していると思っています。自分は大切にしているとはいっても、やはり「たまに忘れそうになる」というのは、分かる気がします。

 

「記録に残らない」のは、「独自」のものだからである、すなわち、記録に残るようなものは、普遍的でそこら中にありふれた、独自性のない、面白みのないものであるという皮肉が込められている気がするのです…さすがにひねくれすぎた解釈だとは思いますが…(苦笑)

 

 

 

「県境越えたら君の街が見え」るというのは良いですね。川か何かを越えると、街並みが見えてくるという感じなのでしょうか。

そして、「細長い深呼吸をひとつ」という歌詞が、この曲の中で一番好きな歌詞です。緊張して、心拍数が上がって、とにかくドキドキしているときに、あえて深呼吸をすると、なんだか気管が細くなったような感じがしませんか。そういう独特の状態を、「細長い深呼吸」と表現しているのかなと思っていて、すごく的を射た表現であり、素敵な表現だと思っています。

 

つまり、主人公は、もうすぐ君に会えると思って、緊張しているのかなと思いました。そこで緊張をほぐすために深呼吸をしたのだとしたら、本当にかわいいものです。

 

 

 

 

地平の茜色が徐々に消えていく レール叩く闇のリズム

強く強く もう無いはずの力で強く

ギュギュッとしてる想像でひらけた

「地平の~ていく」とういことは、もうすっかり暗くなってきて、夜の時間帯になってきているということですね。夕暮れ時に電車に乗ると、車窓から見える地平線の夕焼けがだんだんと夜の暗闇に押しつぶされていくような感じが見えて、なんだか不思議な感じがしますよね。

 

こうして暗闇が広がってきた中で、「レール叩く」音、つまりガタンゴトンという音が響いているということだと思っています。歌詞をそのまま受け取るならば、「闇」が「レール」を「叩く」ということなのでしょうか。

 

 

 

「もう無いはずの力」とは一体どういうことなのでしょうか。個人的な考えとしては、色々挫折を経験して、自分としては力尽きたということを表していると思っています。主人公としては、自分にはもう何にも挑戦する力はない、残っていないと考えているのだと思います。

けれども、「強い」「ギュギュッとしてる想像」を抱いていたら、本来は「もう無いはずの力」で何か希望的なものが拓けたのだと思いました。"はず"というのは主人公の主観的な想定(どちらかといえば悲観的)で、結果としては、「想像」によって何かをひらくことに成功したということではないでしょうか。

 

「ひらけた」のは、一体なんでしょうね。ここがひらがなになっているので、どうも想像がつかないのですが、きっと希望的なもの、つまりチャンスとか将来とかなんだろうと思っています。

 

 

 

余談ですが、「もどかしい加速を知る」と「レール叩く闇のリズム」の後に、シンセのまっすぐなピューピューみたいな音が入りますが、この音が、私には電車のインバータの音に聞こえてきます。物理とかがよくわからないので、詳しい説明は検索していただきたいのですが、超初心者鉄道ファンの私からは、電車の駆動音と申し上げるにとどめておきます。

 

その音は、非常に独特なもの(発車時に聞こえる、プーンとかピューンとかいう音)であり、聴くだけで楽しい音です。

『快速』での、この2か所のシンセの音が、いわゆる墜落インバータの音に似ていると感じています。(もちろん異論はあると思いますが…)これは、JR東日本E231系に代表されるもののようです。

 

ちなみに、私が一番好きなインバータ駆動音は、209系の三菱GTO-VVVFのものです。あの独特な甲高い音、しかもふわっとしつつ、THE機械みたいな音で、何回聴いても飽きません。

 

 

『快速』にはところどころシンセの音が入ってきますが、それが曲全体の良いアクセントになっているなと感じます。曲全体を通して、力強く野太い音が響いているので、シンセが繊細さをうまく付け加えている感じがしますね。

 

 

 

 

身の程知らずの 憧ればっか抱いて

しばらく隠れていた心

吊り革揺れてる ナゾのポジティビティで

迎え入れてもらえるかな

「身の程~いた心」のところは、すごく共感できるなと感じています。やはり主人公は、色々な挫折を経験しているために、自己肯定感が低くなっていると感じられます。だからこそ、主人公は色んな「憧れ」を抱くたびに、これは身の丈に合わない、ちょっと無理のある憧れだなぁと感じて、臆病になっているのだと思いました。心が「しばらく隠れていた」んですもんね。

 

 

それでも、「吊り革揺れてる」様子が、主人公の「ナゾのポジティビティ」(=自己肯定的な心の状態)を呼び起こす要素になって、少し明るい気持ちになったようです。吊り革が揺れている様子が、なんだか楽しそうに見えたのでしょうか。

いずれにせよ、そういった様子をみて、主人公は自己肯定的な心の状態で、相手に「迎え入れてもらえるかな」と期待したようですね。

やはり「ポジティビティ」という言葉が出てきているからこそ、「しばらく隠れていた心」というのは、自己否定的な心の状態を表しているのだと思います。

 

 

 

 

 

無数の営みのライトが瞬き もどかしい加速を知る

速く速く 流線形のあいつより速く

草原のインパラみたいに速く

すすけてる森の向こうまで 向こうまで

最後の部分にまた、冒頭のフレーズが出てきました。これまではマイナスな、ネガティブな状態で「流線形のあいつより速く」と思っていたけれど、吊り革~の部分を経ることで、ポジティブな状態で「流線形のあいつより速く」と思っている、という対比になっている、つまり同じことを思っているにしても、主人公の心の状態が変わった、ということを表しているのかなと思いました。

 

 

「草原のインパラ」とはなんぞや、と最初は思ってしまいましたが、これは草食動物で肉食獣に獲物になりやすい動物のようです。しかし、彼らから逃げ切れるほどの足の速さはあるそうです。チーターに追いかけられても、逃げ切ることもできるようです。

 

そんなに「流線形のあいつより速く」と言うくらいですから、チーターみたいに速く、でもよかった気がするのですが、インパラだそうです。きっと、主人公は、肉食系ではないし、逃げ足も速いタイプの人ということを表そうとしているのでしょうね。

 

 

 

最後、「向こうまで」が2回繰り返されますが、これによって、ただ「すすけてる森」の向こうへと通り抜けていくだけではなく、その先、さらに先へと行こうとしているという心意気が伝わってきます。

 

 

・・・・・・

 

 

途中、長々と生半可な鉄道知識を織り込んでしまってごめんなさい。(そこまで詳しくないので、記事に織り込むかどうか迷ったのですが、やはり感じていることは書かないと気が済まなくて、書いてしまいました。)

 

 

 
世の中には様々な、鉄道を連想させる曲がありますが、個人的に『 快速』はダントツに鉄道にぴったりな曲だと思います。もちろんス ピッツファンだから、というのもあります!

 

 

曲調が、鉄道に乗っているときに聞こえる音のイメージとぴったりなんです。

途中で流れてくる真っ直ぐな、ピューというようなシンセの音は、鉄道の駆動音と似ている気がしますし、間奏のダダダダ って感じも、電車が最高速度で区間を走行しているときのモーター 音に似ている気がしますし、 Aメロのシンプルなギターのバッキングも、電車が走行していると きの音に感じられますし・・・歌詞にも、鉄道を連想させるような ワードが入っていて、やはり鉄道らしい曲だと感じます。

 

 

さて、「流線形のあいつ」とは、一体何なのでしょうね。


まず、鉄道車両だとする説がありますよね。以前本ブログでも取りあげたように、新幹線とか、特急列車とか、流線形のフォルムの車 輌はいくつかあります。ただ、「流線形のあいつより速く」 と言っているのですから、主人公が乗っている車輌と併走している 流線形車輌なんだと思います。 


次に、自分自身のライバルだとする説もあると思います。この曲に は、鉄道的な要素と、主人公の心情(ネガティブからポジティブへ の心情変化、緊張しているなど)の要素が含まれていますから、「流線形のあいつ」をただ無機質な鉄道車両ととるのではなく、自分 自身と同じ夢に向かって日々邁進していて、かつ自分よりも少し先 へ行っているライバルと捉えてみるのも良いかなと思いました。

自分のライバルよりも、自分はまだ劣っているから、 少し臆病になったり、そいつよりももっと前へ進みたいと思ったり 、そいつよりも速く、そして先に目指すべき場所(=「 すすけてる森」)へ行きたいと願ったりと、夢へ向かって頑張る人の曲にも聞こえてきませんか。
いずれにせよ、自分よりも先へ行くなにかを指しているのには間違 いなさそうです。

 

 

 

私はこの曲が、とにかく好きです!何回聴いても、『また聴きたい !』と思うような曲です。聴いているだけで軽やかな気持ちになる とともに、鉄道に乗っているような気持ちにもなって、 凄いなと思います。名曲ですね。

 


鉄道会社の旅行キャンペーンのCM曲にもぴったりなんじゃないかなぁと思っています。その際は、「無数の営みの~向こうまで」の 部分を使ったら良いと思っています。