こんにちは、わんわん電鉄です。
今回は、1996年2月に発売された堂島孝平さんの『陽だまりの中に』をご紹介したいと思います。
暖かい日に公園や河原で愛犬を連れて一緒にフリスビーでもして遊びたくなる、ハッピーチューン集。『オールナイト・ニッポン』のパーソナリティを務めるシンガー・ソングライター、堂島孝平のセカンド・アルバム。聴いているだけで、なんだか、楽しくなってきます。 (C)RS(CDジャーナル)
このアルバムは、堂島さんの2枚目のアルバムということで、まだまだデビューしたてのフレッシュな感じもあり、10代らしい若々しさもあり、しっとりと聴かせる曲もあり、さらに、今の堂島さんの原形といえるようなポップな感じもあり・・・堂島さんのかわいさをギュッと詰め込んだようなアルバムになっています。
そもそもジャケットからかわいいですよね・・・無邪気な笑顔の堂島少年・・・!
というわけで、このアルバムの全11曲について、レビューと感想を述べてみたいと思います。
(なお、本アルバムの曲の歌詞につきまして、CDやブックレット等を所持していないため、インターネット上で歌詞情報を確認できないものにつきましては、私が聞き取り書き起こしたものとなります。そのため、ブックレットに記載されている実際の歌詞と表記や細かな言葉遣いが異なる可能性があります。予めご承知おきいただけますと幸いに存じます。よろしくお願いいたします。)
①ゴー・ゴー・タンバリン!!
イントロから突き抜けて明るく、キャッチーな曲です。歌い方も、かなりはじけた感じで、若々しいなぁ~と感じます(曲の途中でシャウトしてますよね!?)。このアルバムのイメージを方向付ける曲だと思います。
個人的には、歌詞が面白いなと思って聞いています。
とりあえず鞄には漫画ばっか入れておけ
誰が見たって気づきはしないさ
セピアの目隠しサングラスかけて急ぐ
けれどなかなか来ないエレベーター
語感も面白く、歌詞の内容も想像すると面白いですね。主人公の、少し背伸びをしている感じがいいです!
この曲の意味について、個人的には、「今自分がいる世界が信じられない!でも一歩ずつ進んでいくぞ!」という、戸惑いと嬉しさと勇気を表現した曲だと考えています。
もしかしたなら僕は今蜃気楼の中にいて
目に映る全てのものが幻かもしれないな
今日も明日も明後日も夢かもしれないけれど
思っていたよりも良い状況に遭遇したときに感じがちな戸惑いと嬉しさの混在した複雑な気持ちが、等身大に描かれていて、とても好きです。
②裸の心へ
つらさ、苦しさ、悔しさといった負の感情を軽くしてくれるような、セラピーのような曲に感じます。というのも、前作『僕は僕なりに夢を見る』の曲の多くは、そういった負の感情をひたすら吐き出し、それをもとに社会全体に訴えかけるような感じだったのでした。この曲は、前作を超えていて、その感情を自ら受け止めて、昇華するすべを示すところまでしてくれているからです。
涙を拭いたなら 全てを忘れてよ
オーロラみたいに輝いて
忙しい毎日だ どくろな毎日だ
雲になれ溜息
個人的には、このサビの歌詞が本当に好きです。堂島さんの独創的な観点から、前を向くためのすべを表現していて、非常に心に残りました。
この曲には、哲学的な表現の歌詞が多く、聴いていてグッとくるフレーズが多々あります。
曲がりくねったストローで夜を覗いてごらん
枠をちょっとはみ出した君を見るから
ストローで夜を覗く、という表現から面白いですね。
そもそものぞき込もうとしているストローから曲がりくねっているのに、そこから見える「君」も枠をはみだしたような人物であるようです。
少しはみ出た生き方も肯定してくれるような気がします。
卑しい日々に飲まれるその前に
生まれ変わるのさ裸の心へ
このマインドは、保ち続けていきたいなと思って聴いています。
人間誰しも負の感情をいだくことがありますが、それをどうしていけばいいのか、悩みがちだと思います。そんな私たちの悩みにそっと寄り添ってくれるような曲です。
③サニーサイド
体を揺らしながら聴きたくなる、ドライブにぴったりな曲だと思います。イントロの少し西日の光を感じさせるようなハーモニカの音がすてきです。
サニーサイド、というと、一般的には「日が当たる側」という意味だそうです。この曲では、「君の隣がサニーサイド」と歌っていますが、これは君の隣こそが、自分にとって(精神的に)陽だまりを感じられる場所、という意味なのでしょうか。それとも、純粋に、助手席(=僕が座る方)がまぶしい、ということなのでしょうか笑。
夕暮れまでのんびりと 君の隣がサニーサイド
シビックでほら走りましょ いつも君がドライバー
シビック・・・!!!!懐か死んでしまいます・・・。当時走っていたシビックというと、こんな感じでしょうか。
この曲がさらにかわいらしく感じてきますね!
また、90年代に、女性がドライバーで、僕が助手席に座る、という構図を歌っているのもなんだか新鮮で良いなと思います。助手席キャラの堂島さんだからこそ書ける歌詞だなと思います。
ちなみに、この曲には、「パーティー編」ということで、おそらくこの曲のライブ音源が収録されたバージョンがあります。こちらは、原曲よりもさらに、楽しげで陽気で、多くの仲間に囲まれている明るさがあります。さらに疲れがふっとびそうです・・・!
④ハンモック
流れるような、新緑の季節のようなキラキラ感とみずみずしさを感じさせる曲です。歌詞を見てみると、そんな曲調とは裏腹に、叶わない思いを抱きながらも、日々生きていかなければならないこと、だからこそ、優しく包み込まれたいという切実な思いが描かれているようです。
レールを外れた思惑
時に誰も曖昧なままで夜にさよならしてる
哲学的な歌詞でとても好きです。
色々思うところはあっても、なんやかんや寝て起きて、今日を生きてる、ということを実感する歌詞です。
⑤さよなら
年下のオトコのコ感を感じさせながら、切ない感情を繊細に、時に感情的に表現している曲で、非常に聴き応えのある曲です。この曲では、付き合っていた女性と離ればなれにならざるを得ないなかで、そのことをつらく寂しく思う心情と、それゆえになかなか別れを告げることのできない主人公の姿が描かれていると考えます。
もう明日の今は君はここにいない
風になっても君には届かない
今すぐ時間を止めて世界を眠らせて
七色の星空よ
降り注ぐ光に今 僕のセリフは照らされて
ドア越しに笑う君にさよなら
歌詞だけを見ても切ないのですが、堂島さんの感情のこもった歌声に乗ると、さらに切なく、胸がきゅうっとなります・・・是非聴いていただきたいです!
「僕のセリフは照らされて」という表現がなんとも秀逸ですね・・・。駅のホーム(?)の光を強く自分に浴びているように感じるほどに、気持ちが募っているということが表現されているように感じます。
⑥てのひら
晴れた日の公園を闊歩しながら聴きたくなる曲です。ポップでキャッチーでかわいらしくて、堂島さんらしい曲だなと感じます。どんなことがあっても、お互い手を取りながら前向きに日々を歩んでいこうという決意表明のような曲だと思います。
個人的には、Bメロのメロディーがかなり好きです。少し影を見せるコード進行が曲にメリハリ(歩いたり、少し走ったりといったような)を感じさせると思います。
細い腕風を切って陽だまりへかけこんでゆく
傷ついて塞ぎ込んで手を取って慰めてそして別れてく
バイバイバイバイまた明日・・・
やはりこのサビの歌詞が秀逸であると感じます。『ハンモック』のように、人生いろいろ思うところはあるけれど、前向きに明日に向かって、みんなで生きていこう、という気持ちになれる曲です。
⑦君は僕よりも
この曲も年下のオトコのコ感に母性本能をくすぐられる、切ないラブバラードです。曲の中で描かれている一つ一つのシーンが歌詞の通り「おとぎ話」のようであり、紡がれている言葉が非常に切ないことから、個人的には、密やかにオルゴールを聴いているような気持ちになります。
馬鹿馬鹿しい僕のプレゼント
知っていたかのように笑って
お返しなんてひどくおどけて
『星影のワルツ』を口ずさんだ
歌詞によると、「君」は「僕」よりも3歳年上のようです。この年齢差から、少し「君」は「僕」を見透かしたり、軽めに扱ったりすることがあったのかなぁと想像します。
『星影のワルツ』とは、千昌夫さんの曲であると推測しますが、これは、別れの曲であるようです。もうまもなく別れる、と「君」はわかっていたからこそ、「僕」からプレゼントをもらっても、そのお返しを準備することなく、そのように歌を歌ったのでしょう・・・切ないですね・・・。
謎めいた青い目が
季節を吸い込むたびに
空想を飛び出したいくつものおとぎ話
「君」と「僕」とは、それなりに長い時間を過ごしていたのだと思います。そのたびそのたびに楽しい思い出があって、それが「おとぎ話」のように感じられたのでしょう。
ろうそく包むように君がそばにいてくれた
それよりも強いものを君はきっと求めてた
やはり「僕」は年下だからなのか、「君」が求めていた包容力のようなものを与えることができなかった、ということなのでしょうか・・・お互いのすれ違いは、辛いですね。
離れていく君を想う涙が頬を伝うのさ
このサビの最後のフレーズがまたいいですね。悲しいとか、辛いとか、そういった主観的な表現ではなく、「涙が頬を伝う」という客観的な視点からの表現であることで、一人取り残された主人公の寂しさを強調するような感じがします。また、「頬を伝う」ということから、静かに悲しむ気持ちが表現されていて、さらに切ない気持ちになります。
⑧ペーパームーン
切ない感情をポップなメロディーにのせて昇華して、別れた恋人を想う寂しさを抱えつつも前向きに自分の人生を歩んでいこうとする気持ちが描かれた曲です。
普通は、別れた恋人、それも突然手紙を残して出て行くような恋人のことを思うと、胸が苦しくなって、自分の人生を見失ってしまうような気がします。「失恋状態」は、自分をからっぽにさせますね・・・。それに対して、この曲の主人公は、そんな状態を乗り越えて、いつか君とまた会えたら良いな、という純粋な気持ちをもって、自分の人生を生きていっているようです。この前向きさが本当にキラキラ描かれていて、すてきな曲です。
ペーパームーンでもう一度君に会えたらいいのにな
木漏れ日の射す坂道をひとり駆け登る
広い宇宙のどこでなら君のリズムが響くだろう
青い空の下で僕は息を切らしてる
ずっと
曲のキラキラ感と、前向きな気持ちが表現された歌詞が相まって、聴き手は胸がいっぱいになります。
とりわけ印象的な歌詞が、「広い宇宙~響くだろう」の箇所です。色々と捉え方はあると思いますが、私は、これを“君の良さを殺すことなくいきられる場所はどこだろう”という意味に捉えました。「いつか手紙残して消えた恋人」には、色々と事情があったのだと思いますが、とりわけ、自分と周りの世界が合わない(周りから色々と言われたりする)、と感じてしまったのかと推測しました。だからこそ、主人公のことは好きだけど、離れてしまったのでしょう。
ここで、主人公も、君の良さを殺して一緒にいようと考えるのではなく、君の良さを活かして、その上で一緒にいたい、と思う気持ちを持っているというところがいいなと思いました。
⑨フリスビー
緩急のついたリズムが心地良い、ノれる曲です。歌詞の通り、青い空、白い雲、広々とした場所のイメージが鮮明に湧いてきます。アルバムジャケットでビーグルに向けて堂島さんがフリスビーを投げていますが、この写真の着想は、この「フリスビー」から生まれたのでしょうか?
個人的には、この曲の「フリスビー」とは、堂島さんが作る曲や音楽を表していると思います。堂島さんの音楽が、広く遠く、多くの人のもとに届いてほしい、という願いが込められているように感じます。だからこそ、シンガーソングライターとして感じる様々な苦悩が描かれているようであり、また、それを乗り越えていく強い気持ちが示されているように思います。
翼のない僕にはマニュアルのありかなんて
きっと探したって無駄さ見つかっても無駄さ
本当のことはもうわからない
どうしてうまく言葉は丸め込まれてくんだろう
何を語っても無駄さ何言ったって駄目さ
この苦しみにもう耐えられない
これらのフレーズには、個人的に共感しまくりです(この感情を24歳の私が感じているということは、当時19歳の堂島さんは、本当にオトナ!と思います。今の私よりも圧倒的に成熟している・・・)。「本当のことはもうわからない」と言い切ってしまえるくらいに、私も腹をくくってしまいたいです!
⑩バード
鳥のさえずりやかすかに聞こえている子どもたちの楽しそうな声がそのまま収録されていて、当時の堂島さんのレコーディングの情景がそのまま浮かんでくるような曲です。是非、ヘッドホンなどで丁寧に聴いてほしい曲です。
1分48秒という、他の曲に比べると短めの曲です。
間違いばかり 朝の景色 浮かんでは消え
悲しすぎたよね
と歌いつつも、それでも最後に
日の当たる場所へ向かう
とのフレーズで締められているところがいいですね。日常の景色に感情が重ねられて、それが表現されているような曲です。
⑪白の世界
死すらも連想してしまうような儚さと、概念的な永遠が描かれた別れの曲です。この曲は、大きく分けて2通り捉え方があると感じています。一つ目は、現実において、二人は別れざるを得ない中で、それを嫌がった二人は、永遠に結ばれるために、死に向かっていった(心中した)、というものです。二つ目は、進学や就職、相手の結婚など、二人は別れざるを得ない中で、それを受け止め、お互いに心の中でお互いのつながりを永遠のものとする、というものです。(「それでも~」というフレーズがあることからして、おそらく後者だと思いますが・・・苦笑)
いずれにせよ、二人ではしゃぐことのできた時間に別れを告げる必要があるという点で、なんとも切ない曲です。大人になるってこういうことなのかなぁ、とも思わせてくれます。
いつの日にか僕たちは
蝶々になる鮮やかに
真っ白な世界へと
はしゃぐ蛹に手を振って
それでも二人は笑っていくのさ
君は僕のどこかで
僕は君のどこかで
大人になる過程を蝶を用いて、美しく表現していると思います。大人になるにつれて、お互い好きだとしても、一緒に居続けることが難しくなることがあると思います。それをなんとかお互い受け止めて、二人はお互いの心に残り続けることで、この気持ちを永遠化しようとする点に、儚さを感じます。
・・・・・・
以上、『陽だまりの中に』の全曲をご紹介しました。
このアルバムを通して聴いていて思うのは、前作『僕は僕なりに夢を見る』からの進化と、当時19歳の堂島さんが年齢以上に大人であること、です。とりわけ、前者については、苦悩やつらさを前向きに捉えたり、ポジティブなものに昇華したり、これらを日々の推進力にしたり・・・と、前作の“叫ぶこと”の一歩、いや二歩先に進んでいったと感じています。
聴けば聴くほどに好きになるアルバムです。
堂島さんのフレッシュ感とオトナ感の共存した曲たちが本当にクセになります!
個人的には、今の私の感情と重なる部分も多く、ついつい感情移入してしまいます・・・。
すてきな歌詞を書く希有なアーティストだと感じます!
ちなみに、2024年4月14日に開催された「Pre Anniversary vol.1 ~1995-2000~」で、このアルバムの『裸の心で』『白の世界』『君は僕よりも』『フリスビー』が歌われたようなんです!!!聴きたかった~・・・ほんっっっっっとに聴きたかったです!
\\ プレイリスト公開 //
— 堂島孝平STAFF (@DJKH_STAFF) 2024年4月14日
🎧#堂島孝平プレアニバ
「vol.1 ~1995-2000~」セトリプレイリスト公開!
※詳細はALTでご覧ください📝https://t.co/VY7JoPnEKD
📸本編中のジャケットオマージュ#堂島孝平 pic.twitter.com/PGr6zgKej0