わんわん電鉄

好きな音楽は、鉄道の路線網のように広がっていくものだと思う

【考察・解釈】スピッツ『まがった僕のしっぽ』

スピッツの最新アルバム『見っけ』が発売されてから、しばらく経ちましたね。

本ブログでは、まだ『見っけ』と『快速』しか取り上げていないので、これからはこのアルバムの曲を中心にレビューを書いていきたいと思います。

 

 

ということで、今回取り上げる曲は『まがった僕のしっぽ』です。

まがった僕のしっぽ

まがった僕のしっぽ


この曲は、このアルバムの中で一番驚かされた曲です。皆さんすでにご存じの通り、この曲は曲の途中から雰囲気がガラッと変わります!

別の2曲を組み合わせたかのような曲で、すごく面白い曲だなと思います。

 

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この『まがった僕のしっぽ』という曲名ですが、“しっぽ”という言葉から、何か長細いものを想像する人が多いのかなと思います。

それこそ、雑誌のインタビューでマサムネさんがおっしゃっていた“チンチン”なのかもしれませんが、いろんなものを当てはめることができそうです。


例えば、物理的な側面から考えたら、そのまましっぽとか、もしくは…(以下略)ですね。抽象的な側面から考えたら、精神とか、信念という風にも考えることができそうです。

 

 

イントロは、斬新なフルートの音から始まるわけですが、これまた新鮮ですよね!最初は、『コンドルは飛んでいく』みたいな雰囲気に感じました。

 

 

気になった歌詞をいくつか取り上げてみます。

 

星空に抱かれ寝るのも 慣れちまったが

ここのフレーズが、すごくかっこよくて好きです。「慣れちまったが」という口調も、なんだか男臭くていいなと思うのですが、なにより「星空に抱かれ」という表現が秀逸だなと思います。つまりは野宿だと思うのですが、地べたに横になって空を見て寝る…これを「抱かれ」ていると表現するのは本当にすごいなと思います。

確かに、横になってみると空以外のものは見えませんから、一面に広がる空に身をゆだねる感じがしますね!

 

 

少し苦いブドウ酒と 久々白いベッドが
君の夢見せてくれたよ

「少し苦いブドウ酒」という表現から、主人公はまだ少し幼い部分があるという気がします。いつもは野宿だけど、今日は久しぶりに白いふかふかのベッドで寝れて、しかもお酒まで飲んでいるから、非常に気分よく眠れた、ということなのでしょうね。

 

 

しかめ面の男が ここに留まれと諭す
だけどまがった僕の しっぽが本音語るんだ
旅することでやっとこさ 自分になれる

ここの部分の解釈が一番難しい気がします。これまでの表現を踏まえると、主人公は放浪の旅に出ているような気がします。すると、一つの場所にとどまるのではなく、色んな場所に移動してこそ、自分らしくいられるんだ!ということを表しているのかなとも思います。

「しっぽ」は、なかなか自己主張の強いようですね!

 

 

打ち捨てられた船に つぎはぎした帆を立てて
今岸を離れていくよ

わざわざゴミ同然の船に手を加えてまで旅に出るのですから、主人公は相当行動力のある人間だということがわかります。

 

 

波は荒くても この先を知りたいのさ
たわけもんと呼ばれた 魂で漕いでいくのさ

今岸を離れたと思ったら、突然やんちゃな激しい音楽に変わります!「シャンシャンシャンシャン!」と勢いよく来たと思ったら、曲調がガラッと変わって、本当に驚かされます。


野太いギターがうねる感じが、波が荒い感じをよく表現しているなと思います。
ちなみに「たわけ」は、中部地方、とりわけ岐阜県あたりの方言らしいです。

 

 

例えどんな形でも 想像しなかった色でも
この胸で受け止めたいし 歓喜で咆えてみたい

ここからのメロディーが本当に大好きです!テンポも速いし、ドラムがせかせかしている感じで、疾走感があります。ギターの音もじゃーんじゃーんと、大股で走っているような感じがしてすごくいいんですよね!


「この胸で受け止めたいし」と、何気なく口語が入っているところがすごく好きです。

 

 

勝ち上がるためだけに マシュマロ我慢するような

これはどう捉えたらいいのでしょうね。マシュマロ=おっぱい…とも思ったのですが、それでは不適切ですね。

きっと、自分の目標を達成するために、自分が欲しいと思うものを我慢するという趣旨なような気がします。

 

 

せまい籠の中から お花畑嗤うような

ここも下ネタ的に取ろうと思えばとれるような気がするのですが、それはほかの解釈を書いてらっしゃる方にお任せすることにしましょう。


私は、ここは“ずるいやつ”を言っているような気がしています。「せまい籠」という表現から、自分の殻を割れずに、小さく生きているような奴が、大きく広がるお花畑をひがみっぽく笑っている、という風に聞こえるんですよね。

 

そもそも「嗤う」は、わらう、と読みますが、これは「馬鹿にしたように笑う、見下したように笑う」という意味なので、やはり「せまい籠」の中から「お花畑」を見下しているのだと思います。

 

 

そんなヤツにはなりたくない 優秀で清潔な地図に
禁じ手の絵を描ききって 楽しげに果てたい

ここのフレーズが一番ドキッとしますね!なんだか危ない感じがします笑


小さく生きて、ひがみっぽくいる人間よりも、豪快に(少し禁じられたことにも手をだしつつ)やんちゃするような人間でありたいということなのでしょうか。
「楽しげに果てたい」というのは、う~ん、読み手を困らせるほどにエロいですね。
ここで言っていることは、『スパイダー』の「洗いたてのブラウスが今 筋書通りに汚されて行く」と似ている気がします。

 

激しいやんちゃな曲調は、ここで終結します。「果てた」んですかね笑

 

 

ほらね曲がった僕の しっぽが本音語るんだ

ここで、「え!?これまでの激しい曲調で語られていたことはすべてしっぽの本音だったの!?」ということに気づかされます。本当に面白い曲ですよね。

 

 

旅することでやっとこさ 自分になれる
打ち捨てられた船に つぎはぎした帆を立てて
今岸を離れていくよ

また先ほどの、転調する直前に入れたフレーズを入れることによって、無限ループ性を感じますね…(実際、曲はここで落ちついて、終わってしまいます。)

 

 

結局、このしっぽは旅が大好きなのでしょうね。
色んな人と代わる代わる接触するのが好きだという風にも考えられるような気がしたのですが、あまりに不埒なのでやめておきます。

 

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以上、『まがった僕のしっぽ』の歌詞について考えてみました。

 

非常に歌詞が若々しいですよね!マサムネさん自身もおっしゃっていましたが、「この歌詞は10代の子が書くような歌詞」です。スピッツは長老バンドになってきましたが、最新アルバムでもこのようなやんちゃな若々しい曲が聴けると思うと、もううれしくてたまらないです!

やはり、ロックバンドだなということを再認識させてくれます。

 

 

ちょっとあぶなかっしい感じがまた新鮮なこの『曲がった僕のしっぽ』は、本当にいろんな人に聞いてもらいたいなと思います!