わんわん電鉄

好きな音楽は、鉄道の路線網のように広がっていくものだと思う

藤巻亮太『Sunshine』感想とレビュー

こんにちは。わんわん電鉄です。

 

 

今回は、1月25日にリリースされた藤巻亮太さんの新アルバム『Sunshine』について、私なりの感想とレビューを書いてみたいと思います。

 


まず最初に、アルバム全体の感想を申しますと、
音楽的には、レミオ初期の雰囲気が良い感じにブラッシュアップされて、良いエッセンスとして活きている

音が細やかに敷き詰められている感じがすごく心地良い
という感じがします。

 


歌詞的には、全体的に明るいものが多いのですが、それが空元気というわけではなく、悩み、考え抜かれた末にたどり着いたものであり、それゆえに深さや厚みがある
という感じがします。

 

 

初めて全12曲を聴き終わったときには、
「藤巻さん大好き!!!(←語彙力皆無)」という気持ちになりました(これまでは、あくまでもライトに、「好きだな~」という感じだったのですが、このアルバムをきっかけに、好き!が溢れるようになってしまいました・・・尊い!)。

 

 

というわけで、1曲ずつ、レビューしていきたいと思います。

 

 

①この道どんな道

この道どんな道

この道どんな道

  • provided courtesy of iTunes

TBS駅伝のテーマソングとして起用された曲です。
聴くだけで、萎れかけた気持ちがぱあっと上向きになっていくような曲です。Aメロのメロディーが特に、そのような感じがします。

 

この曲のBメロもまた良いです。

格好つけんなよ
子どもの僕に
叱られてしまうよ

メロディーは、もちろんのこと、歌詞もいいですよね。すなわち、変によく見せようとか考えて、うわべをつくろってやろうとすることは、ある意味で「大人」の常套手段かと思いますが、それでは、「そんなことをするのは良くない、ありのままの姿で取り組むべきだ」と考えていた純粋無垢な頃の自分に顔向けできない、ということなのだろうと思います。藤巻さんらしい歌詞だなと思います。

 


この曲で響いている楽器の音がカッコいいんです!例えば、サビで効いている、上がったり下がったりする音(デデデデみたいな音)が好きです。この音があることで、上り道であったり下り道であったりする様子が鮮明に思いうかぶんです!凄いなぁと思います。また、「胸に秘めて」の「てぇ~」のところから鳴り始めるベースとドラムがカッコよすぎて、ゾクゾクします。

 

 

さらに、曲の最後の部分も好きです。この部分だけ、これまでの曲調とは異なって、浮遊感があり、そのうえ、歌詞も回想的なものとなっているので、幻想的な感じがします。歌詞は、

草むらをかき分けてた
少年が見つけた
輝き 暗闇
風が吹き抜けた
あの トキメキ

となっています。「輝き」と「暗闇」という対立概念が、接続詞を伴うことなく並べられているところが、好きです(藤巻さんの曲の歌詞には、こういった接続詞なしに、客観的に認識しうる事象を並べるようなものが多くて好きです)。


この歌詞から、「少年」は、自分で探して、出会った「道」が自然によって承認されたということに対する喜びを感じているのかなと想像します。「風が吹き抜けた」と「あのトキメキ」との間に、余計な言葉や説明がないからこそ、具体的なシーンと、「少年」が感じたであろう「トキメキ」を追体験できるような気がします。すごくすきな歌詞です。

 

 


②Sunshine

Sunshine

Sunshine

  • provided courtesy of iTunes

この曲は、アルバムリリース前に先行配信されていたのですが、私の謎のこだわり、すなわち、「アルバム曲を初めて聴いたときの感動は、アルバムを初めて初めて聴いたときにとっておく」というこだわりのために、この曲を聴くことをずっと我慢していました。しかし!リリース日前日に藤巻さんのインスタライブがあり、そこで藤巻さんが披露してくださったんです!(このとき、聴くか、聴かないか!?と非常に悩みましたが、結局、聴きました・・・欲望に負けました笑)もっとも、このとき、藤巻さんはアコギ1本で弾き語り形式で披露してくださいました。そのため、この曲をアルバムで初めて聴いたときの「おいしさ」は、二倍でした!というのは、私の個人的な感覚の話になるのですが、アコースティック形式や弾き語りで演奏されていた曲を聴いて、あとから、バンド形式で演奏された同曲を聴くと、感動が二倍になる、ということが多くあります(例えば、スピッツの『日なたの窓に憧れて』を聴いたとき)。だからこそ、藤巻さんには感謝です、ありがとうございます。

 

 

前置きが長くなってしまい、すみません。

曲全体について、ゆったりとして、まろやかな曲調が心地いいです。そのうえ、サビの終わりのほうで鳴りひびくマンドリンの音が、これに「感情の細やかな揺れ」をプラスしてくれていると思います。すなわち、ここでのマンドリンは、繊細で細やかさを表現する方向で演奏されていると思うのですが(マンドリンの奏法のこと)、これが感情の機微を表現しているように思うのです。

 


メロディーもまた素晴らしくて、とりわけ、サビの「いつの日かまた会おう」「僕が抱き締めたのは」などの部分のメロディーがとにかく気持ちいいんです・・・!初めて聴いたときは、鳥肌が立ちました。

歌詞については、

Sunshine 過ぎてゆく
時だけが朧げに
僕が抱き締めたのは
一瞬の輝き

この部分が特に好きです。私は、この箇所を、不可逆的に進む、触れたり見たりすることのできない「時」から、すくい上げられたのは、その時を過ごしたことによって心のなかに得た「輝き」(=思い出、喜びなど?)であった、と解釈しています。なにかを抱き締めることが出来たとはいえ、それすらもつかみどころのない感じがまた切なくさせますね。

 

 

先日公開されたMVもまた、ステキですね!
光に包まれた藤巻さんが気持ちよさそうに歌っている姿は、この『Sunshine』の歌詞の世界観をそのまま表現していると思います。個人的には、光の色の加減からか、どこか懐かしさをも感じさせてくれるMVだなと思っています。


www.youtube.com

 

 


③裸のOh Summer

裸のOh Summer

裸のOh Summer

  • provided courtesy of iTunes

この曲は、個人的に「これぞ、ずっと聴きたかった藤巻ロック!」という感じがしています。同曲は、レミオロメン時代からデモテープがあったようで、確かに少しレミオ風味を感じてしまいますね・・・(とりわけ、イントロやサビの雰囲気)!?

 

 

この曲については、歌詞が特に好きで、とりわけ、Cメロ部分、

お隣の芝生は青く見えんの
石垣に足かけてる
Oh 切ないほど惨めな

自分にサヨナラして

この歌詞が心にグサッと刺さりました。
私は、「石垣」というのを、「お隣」、すなわち、他者との“境界線”と捉えて、つぎのように解釈しています。すなわち、自他の境界線をしっかりと引いて、他人がどうしているのかを気にすることなく、自分がやるべきこと・やりたいことを真っ直ぐに追いかけるようにすべきである、ということを歌っているのではないかと思っています。境界線に足をかけてしまっているわけですからね。他人の世界をのぞき込んでみれば、そりゃあ隣の芝生は青いですし、自分と他人とを比べて惨めになりますよね・・・。また、そうやって他人の世界をのぞき込もうとしている自分を客観視してしまったとき、なおさら自分が惨めに感じますよね・・・。この歌詞は、最初に聴いたときは「!?」と思いましたが、よく聴いてみると深い歌詞です。

 

 

自分のやりたいこと、やるべきことをもう一度、心に取り戻すことが大事だなと思わせてくれる曲です。

 

 

 

④僕らの街

僕らの街

僕らの街

  • provided courtesy of iTunes

メロディーにおける和風な雰囲気と、歌詞における自ら選んだ土地で生きていくことの豊かさ・素晴らしさ、さらに、そこに住む人々の営みやあたたかさの表現とが相まって、何気ない日常のなかにある幸せを感じさせてくれる1曲です。

 

タイトルの『僕らの街』というのは、静岡県山梨県~長野県のあたりがイメージされているようです(中部横断自動車道 新清水JCT~富沢ICの開通記念テーマソングでした)。

prtimes.jp

 

私も、中部地方出身なので、この曲で歌われている土地の雰囲気が想像できて、しかも、それが幼少期の記憶とリンクするため、聴いていると心がジーンとしてきます。

 

 

個人的には、

長い冬が明け春の温もりに
包まれて涙する

という歌詞が凄く好きです。冬が長く、寒い地域出身である藤巻さんならではの歌詞だなと思います。冬にたくさん雪が降るような地域に住んでいたことのある人間として、その季節が終わって、あたたかな日差しを浴びて、春が来たことを実感すると、なんとなく感動するといいますか、新たな季節を迎えられたことに対する喜びを感じていたので、すごくいい歌詞だなと思います。

 

MVは、コチラです!


www.youtube.com

 

 


まほろ

まほろば

まほろば

  • provided courtesy of iTunes

サントリー天然水の「北アルプス」デビュー記念の曲であったということもあり、豊かな自然の情景が余すところなく描かれています。

www.suntory.co.jp

 

マンドリンの軽やかな、歯切れの良い音が、その土地・自然の純朴さを表現しているようで、とても好きです。

リズミカルに、跳ねるようなAメロ・Bメロを経て、水が流れ出すように滑らかで勢いのあるサビがくるのですが、この構成がまた素晴らしいなと思います。サビを聴いていると、自分が本当に自然のなかを駆け回っているような気分になってきますよ!(二番のサビの「中央道を飛ばして~」の部分は、本当に道をビュンと心地よく走っているかのような気持ちになります笑)

 

 

この曲では、二項対立にある(あるいは、あると思われがちな)概念は、決して断絶したものではなく、繋がっているのだということを歌っているのかなと思います。すなわち、都会にいる自分(曲の主人公)と、自然豊かな故郷で暮らす父母たち、都会と田舎、都市と自然、昔話と未来の話、現実と理想といったものたちは、両者が排斥し合うことなく、実は、繋がっているというのです。

 

最後の

あなたがいる場所が

まほろ

という歌詞が本当に良いですね。自然豊かだから良い場所だ、都会で色々と豊かだから良い場所だ、というのではなく、「あなたいる場所がまほろば」だというのですから。この箇所について、あなたがいるからこそ、そこが「まほろば」だ、と読むのか、それとも、あなたがいる場所、すなわち、「まほろば」と読むのかは分かりませんが、いずれにせよ、どんな場所・土地も素晴らしいものだということを実感させてくれる歌詞だと思います。

 

MVは、コチラです!

個人的には、マンドリンを"抱えながら"弾いて歌う藤巻さんがすごいなぁと思います。今まで、座って弾いている人、あるいは、ストラップで肩から提げている人しか見たことがなかったからです。


www.youtube.com

 

 

⑥ゆけ

ゆけ

ゆけ

  • provided courtesy of iTunes

この曲は、シングルとしてリリースされた曲でもなければ、これまでのライブで披露されたこともない、このアルバムの完全新曲です!

 

 

個人的には、20年後も聴いていたい、責任世代に響く曲だなと思っています。というのは、この曲に出てくる人たちは、みんな「責任世代」のひとたち、それこそ、藤巻さん世代(40代)のひとたちであり、この曲は、その世代特有の日常や、悩み、つらいところ、楽しいところを歌った歌であると思うからです。私自身、まだまだ若造で、『ゆけ』の世界に出てくるひとというよりかは、まだレミオロメンの『歩調』の主人公のような感じです。一人の社会人として、社会や家族に対して責任を負ったことがないからこそ、この曲がもつ意味を100%実感しきれていないような感じがしています。だからこそ、責任を持てるような大人になってからまた、もう一度この曲を聴きたいなと思っています。

 

 

と書きつつも、今の時点(歳)での感想を書きたいと思います。

朝に聴きたくなる、前向きで明るいメロディーもいいのですが(サビの始まりで鳴る鐘のような音が「はじまり」を表現しているようでまたいいんです)、この曲は、なんといっても歌詞が良いなと思います。

まず、

誰だってそれぞれの世界

心に抱きしめ必死に生きてるのさ

この部分がすごく好きです。大人として、社会にもまれながらも、人それぞれ、それぞれ異なる「世界」をもって生きていっても良いんだなと思わせてくれる歌詞だからです。また、客観的に、ある意味で"神の目目線(一人の人としての目線というよりかは、天上の神としての目線、という意味)"で書かれたこの歌詞に、多様性を肯定してくれるような懐の深さを感じるからです。

 

つぎに、

一人じゃないから

君とともに揺らぎながら

この部分もまたいいですね。あくまで超個人的な感想なのですが、藤巻さんにとっての「揺らぐ」というのは、ヘーゲル哲学的な揺らぎなのかなぁと思いました。私自身、哲学の専門家でなく、また、ヘーゲルの本を最後まで読めなかった人なのですが、最近、ヘーゲル哲学の超絶わかりやすい神のような解説書*1を読んで、そのように思いました。ヘーゲル哲学自体、どっちつかずで、二つの概念をいったりきたり、あるいは、両方の概念からいいとこどりをしたりするようなもの、すなわち、一つのイデオロギーのみに依って立つような考え方をとらないものであるようです。

藤巻さんも、一つの価値観の体系に染まる、あるいは、手っ取り早く理解できるような、わかりやすい価値観に安直に飛びつくようなことはせず、ヘーゲル哲学のように、いろんな人の価値観に触れて、それらの間で揺れるということを言っているのかなと思いました。そのような解釈を(勝手に)するようになってから、この曲がさらに好きになりました。

 

 

⑦オウエン歌

オウエン歌

オウエン歌

  • provided courtesy of iTunes

藤巻さんの母校である県立笛吹高校の生徒たちへ向けて制作された曲です。学生の旅立ちをオウエンしてくれる曲です。

 

ギターの歪み具合が力強い感じで、骨太ロックな雰囲気がまたいいですね。とりわけ、サビのアルペジオが本当に心地良いです。「いこうぜ 僕らの未来」と、そっと寄り添いながら側を歩いてくれているような感じがします。

 

個人的に、やはりこの曲も歌詞が好きです。

青春の山 友情の橋

これがとにかく好きです(この曲を本当に初めて聴いたときに、ビビッときた部分です笑)。私は、藤巻さんの、心情や主観的なものと、自然や景色とを結びつけた歌詞が本当に昔から好きです。例えば、レミオロメンの『Monster』の『自問と自答の河」は、天才だと思います!ふわっとした、人と共有しようのない形のない主観的なものを、不動のものとして存在する雄大な自然として表現することによって、それらに共通する、いままで自分では気づけなかったような「本質」が明らかにされるとともに、つかみどころのない主観的な概念が鮮明で、私たちで共有しうる概念としての自然風景となっています。これこそが藤巻さんの詩の魅力なのでは!?と思っています。

 

 

この歌詞について、「青春の山」は、個人的には意外な組み合わせで、本当にハッとさせられました。青春とは、学生時代の心動かされた経験が積み重なっていき、後から振り返ってみることで認識されるものであると思っています。そして、その青春は、ずっとその人の心の中に残り続けるものであり、大人になってから振り返ってみても、色褪せることなくしっかりとそこにあるものであると考えています。

この歌詞では、「青春」が積み重なって「山」のようになり、そして、時が経って思い返してみても、それは「山」のように不動のものとしてあり続けるということを歌っているのかなと思っています。

 

 

また、

燃える夕日 夏の群青

流れ星に願い込めて

それは青春 永遠の一瞬

雷鳴が轟いた後の静寂から

この部分は、本当に美しくて好きです。最後の「静寂から」のところは、本当に曲が静かになるので、曲の世界観を体験できるような気がしています。また、後半の2行は、「青春」の時としての儚さを表現していて、心が震えます・・・。

 

 

⑧千変万化

千変万化

千変万化

  • provided courtesy of iTunes

マイナビ農林水産ジョブアスのウェブCM曲として作られた曲です。

jobearth.mynavi.jp

歌詞がとにかくキラキラしていて、人々の熱気と自然の豊かさとが合わさることによって生まれうる無限大の可能性を感じさせてくれる曲です。

 

この曲については、私としては、曲全体の雰囲気のかっこよさを全力で推したいです。藤巻さんの曲の中では、珍しい(?)感じの、ファンクな感じが本当にかっこいいんです。初めて聴いたときには、かっこよすぎて、攻めていて、「めっちゃ求めていた藤巻さんの曲!」という感じで、本当に興奮しました。回転式の椅子に座って、うなりながら回転しまくりました(変な曲のノリ方)。

 

曲の冒頭からジャラッジャッジャッとくるところのキレの良さ、「へこたれずに輝いて」のメロディーのかっこよさ(ギターの音が伴奏してくるからなおさらかっこいい!)、「最高の人生を~」の部分のギターのカッティングのおしゃれさ、藤巻さんの高音(「笑ったり~」「自分らしく~」などの部分)、また、「海を照らす月の明かり~」からのうねりながら流れていく感じ(ウォータースライダーを滑っているような気分になります笑)・・・どれをとってもむちゃくちゃかっこいいんです。語彙力が少なくてすみません、本当にかっこいい・・・。かっこよすぎて、もはやエロさすら感じてきます(?)。

 

 

Heroes(Album Ver.)

Heroes (Sunshine ver.)

Heroes (Sunshine ver.)

  • provided courtesy of iTunes

ウルトラマン クロニクル ZERO&GEED』の主題歌です。


www.youtube.com

 

実は、アニメのなかで流れているのを観たことがありません(濱田龍臣さんが主演だったということくらいしか知らず・・・)。それゆえに、曲そのものの感想となってしまいます、すみません。

 

この曲は、とにかくロックな曲で、個人的には、かき鳴らされたギターの音が非常に気持ちいい曲だと思っています。かき鳴らされたギターの音こそが、この曲を形作る主役で、曲を前へと推し進めているような感じすらします。とりわけ、イントロの終わり、Aメロの直前部分と、Aメロ、間奏のうねるような部分(ここで焦りを感じます笑)で、そのように感じます。

 

 

また、緩急のつきかたがいいなと思います。すなわち、Bメロまでどんどん突き進むような感じで来ていたなかで、サビの冒頭(「進め~ヒーロー」)は、ふわっと、ウルトラマンの独特な動き方(もっさりとした動きをするというイメージが強いのですが、今はキビキビ動くんですかね?)を感じるような雰囲気で、続いて、「朝日に祈り~平和の」の部分は、ギュンギュン細かくかき鳴らされているという構成になっています。このような緩急のつきかたが、緊張感を与えてくれるような感じがして好きです。

 

ギターの弾き方の変化も、聴きどころだと思います。すなわち、サビで鳴っているギターも、サビの冒頭では、音がちりばめられているような感じであるのに対して、その後に続く部分では、ジャカジャカかき鳴らされています。さらにそれに続く「平和の」の部分では、音が上から下に流れるような忙しい感じで鳴っています。

 

 

歌詞については、

宙に還った者たちは流星になる

という部分が好きです。おそらくウルトラマンがなんらかのきっかけで故郷に帰って行くということ(あるいは、「殉死」した場合のこと?)をうたっているのかなと思います。しかし、普遍的なこととしても考え得ると思っていまして、すなわち、勇気をもって戦った者が敗れて(≓殉死)、空に還っていくと考える場合に、ただ還るのではなく、流星として現れて、最後に大きく輝くことで、その勇気が讃えられるということを歌っているのかなと思いました。それは、あくまで「思想」の枠内での捉え方ではありますが、人々の心の中で生き続けるという意味で、なんだか良いなと思った歌詞です。

 

 

⑩サヨナラ花束

サヨナラ花束

サヨナラ花束

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この曲は、私がこのアルバムのなかで一番好きな曲です。

歌詞もメロディーも、すごくツボで、すごく大事にしたいと思った曲です。

 

この曲のいう「サヨナラ」は、日常的な挨拶としてのさよならではなく、人生の終わりとしてのさよならを表しているのだと思います。そうすると、この曲は、藤巻さんなりの「死生観」、すなわち、人生には必ず別れはつきものであることから、それを悲観することなく受け止めながら、また、別れの先でまた出会えるだろうということに期待しながら、自分の人生を自分なりに生きていくことを歌っている曲であるのだと思います。輪廻転生の考え方に近いのかなぁ・・・なんて思って聴いているのですが、どうでしょうか。

 

 

私の中にある「死生観」にかなり近い趣旨を歌っていると思っていて、非常にシンパシーを感じています(勝手にすみません)。それゆえに、聴いていると突然うるっときてしまうことのある曲です。とりわけ、

この命の意味を知る時は

家族も仲間も他人も他国も

繋がっているよ 命のまま

サヨナラからまた歩こう

何者でもない僕らのまま

この、最後の部分が非常に心に響きます。ここでは、人が死んだ(「サヨナラ」した)後のことを歌っていると捉えています。「死」は、ネガティブに捉えられがちだと思いますが(それはもう、未知であるがゆえに怖いことですからね)、ここでは、「死」がただ終わりを意味するのではなく、そこからまた新たな意味を学びとることができる、あるいは、そこには希望があるのだということを感じさせてくれます。すなわち、「死」によって、自分が生きてきた意味を知ることができるのでしょうし、また、肉体が滅びるからこそ、魂レベルで、国籍や人種の関係がなくなるといえるでしょう。

さらに、「死」によって、何者でもなくなった自分たちは、また歩いていけると歌っていて、このことから、また未来での再会も予感させてくれます。

 

今、人生において関わっている人たちとの別れがいつか訪れるときに、強くなれるような気がしてきます。

 

また、メロディーや曲のアレンジ、ギターのジャキジャキした音がすごくかっこいいんです。第一に、サビに入る直前の、「サヨナラ」の部分で、ギュイ~ンとギターの音が鳴るのですが、それがもうたまらなくかっこいいんです。サビで一直線に走るために、クラウチングスタートの体勢をするような感じがします。第二に、サビのメロディーが叙情的で胸がきゅうっとなります。

互いの胸に手向けて

ここのメロディーと、バックで鳴っているギターがたまらなく好きです、エモいです。バックで鳴っているギターをよく聴いてみると、「互いの~」のところがストローク(であってますかね?ジャン、ジャン・・・という感じ)なんです。それまでは、アルペジオで弾かれているなかで、このエモいメロディーのところで、厚みのあるエモい音が響いています。ここのメロディーが持っている切なさや儚さの感じが、心をわしづかみにして揺さぶってくるような感じがします。

 

 

最後に、超個人的で、変態的な感想なのですが、この曲での藤巻さんの歌い方が好きです。とりわけ、「互いの胸に手向けて」の「て」と、「仲間と出会えた奇跡」の「き」の部分の歌い方、声の感じがツボすぎて、ときめきが止まりません・・・。何度聴いても、鳥肌が立ちます。キリッと、力強く、引き締まった歌い方が良いんです・・・。この「て」と「き」の声だけで、あと何年も生きていけるなぁという感じすらしています(?)。

 

 

力強いロックなバンドサウンドで、哲学的な歌詞を歌う藤巻さんが本当に好きです。

 

 

⑪花びらのメロディー

花びらのメロディー

花びらのメロディー

  • provided courtesy of iTunes

ハッピーターン誕生45周年「みんなでつくる、WEB CM『Happy Movie Project』」として作成された記念動画のタイアップ曲です。

youtu.be

優しくて、まろやかで、包み込んでくれるような雰囲気の曲です。

歌詞をみてみると、「僕」と「君」との2人の間のラブソングなのかな?という気もするのですが、私としては、「僕」の愛を、音楽を通じて、広くいろんな人々(それを一般化して「君」としていると捉える)に伝えていこうとしている曲だと思っています。それゆえに、藤巻さんからファンに向けた曲でもあるのかなぁ・・・なんて気もしています。

 

 

どの言葉をみてみても、「僕」の懐の深さ、愛の深さを感じられて、あたたかい気持ちになるのですが、とりわけ好きな箇所が2つあります。

まず、

僕が持ってる全てのものを

 

手放しながら 君にあげながら

幾億の花が心に咲くから

ここの歌詞がとても好きです。

「僕」は、「君」からの見返りを求めることなく、自分のもっているものを「君」にあげようとしているのですが、この「僕」の気持ちが非常にステキだなと思います。そういった気持ちをもってこそ、人と人とのあたたかなつながりができていくのだと思います。

 

ついで、

時間よ止まれよ 君の眼を見つめている

風には春の便り 戻れぬ時を告げている

Aメロの冒頭の歌詞も非常に好きです。この2行から、ここで描かれている時間が、「僕」にとっていかに幸せな時間かがわかるような気がします。他方で、主観的な「僕」の時間が止まってほしいという思いと、客観的な時間的なリミット(春が別れの時なのでしょうか)とが淡々と描かれていて(しかも、低音のメロディーで歌われていて)、だからこそ、なんとも表現し得ない切なさや苦しさを感じるフレーズでもあります。

個人的に、この歌詞と似たようなシチュエーションを体験したことがあるために、なおさらグッときます・・・。本当に、人間の瞳、とりわけ、好きな人の瞳というのは「無限の宇宙」だと思います。

 

 

大地の歌

大地の歌

大地の歌

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この曲は、「震災」をテーマに作られた曲です。世の中にはいろいろと「自然災害」などをテーマにした曲がありますが、藤巻さんのこの曲は、よりリアリティをもって、かなり踏み込んで、その地域に住む人たちの目線から、自然との向き合い方を描いている曲にであると感じています。

prtimes.jp

はじめて私がこの曲を聴いたのは、藤巻さんのインスタライブだったかと記憶していますが、そのときは、アコギ一本で弾き語りだったので、この曲に対して、一人の人間としての祈りを表現している曲であるというイメージを抱いていました。しかし、本アルバムに収録された『大地の歌』は、バンドサウンドでアレンジされています。これにより、自然や大地のダイナミズムをありのままに表現している曲へ変化した、すなわち、曲の視点が「人」から、「自然」そのものへと変化したように感じました。とりわけ、Aメロは、ベースとドラムのみで構成されており、自然の無骨な部分(人間に配慮することなく、無慈悲にも自然災害を引き起こしてしまうような側面)を表現しているような感じがします。

 

 

この曲は、音楽的に「変化」するところが聴きどころだと考えています。すなわち、曲の冒頭こそ、音数が少なく、無感情な感じのベースの音が目立ちますが、曲の最後には、走り出しそうなギターの音色にある、希望を持てるような、明るさのある音が目立ちます。このように、1曲のなかで、このような暗い、白黒の雰囲気から明るい雰囲気へと変化する様子は、人の命をも一瞬にして奪っていくような無慈悲な自然から、人々が何らかの希望を見いだしていく様子を描いているように思います。また、曲の中で、自然から、そこで生きる人々へと視点が変化していく様子をも描いていると思います。

 

 

歌詞には、自然に対する人々、とりわけ、災害の被害を直接に受けやすい地域に住む人々のありのままの感情が描かれています。

敬い崇めて時には恨んで

それでもここでしか

生きられやしない

この歌詞は、そのような感情の「核」となるような部分を鮮明に表現しているように思います。この歌詞のすごさに圧倒されました。

 

改めてもう一度、災害を引き起こしうる自然との向き合い方について考え直すきっかけを与えてくれる曲だと思います。

 

 

 

・・・・・・

 

 

以上が、『Sunshine』全12曲のレビューと感想になります。

超個人的で、主観的な感想・レビューになってしまい、ごめんなさい。このアルバムについては、私が藤巻さんの楽曲に求めていたものがギュッとつまっていて、それが本当に嬉しくて、ついついあふれんばかりの感情を書き散らしてしまいました。

しかも、感情があふれすぎて、どう書けばいいのか悩みまくり、結局、この記事を完成させるのに1ヶ月もかかってしまいました(CDを手にしたのは、発売日当日でした)。もっと簡潔に、わかりやすくアルバムレビューが書けるようになりたいなと思います。

 

 

このアルバムを全体的に考えてみると、前アルバムの『北極星』からの時の流れを感じます。すなわち、前アルバムでは、「君」との2人の関係性を歌ったラブソングが多かったのに対して、本アルバムでは、家族のあたたかさを歌った曲が比較的多いように感じます。なんだかいいですね。レミオロメンの初期の頃こそ、主人公の内心における苦悶や葛藤が描かれているような曲が多かったので・・・・・・本当に時の流れは早いですね~!

 

 

これからの藤巻さんが作る曲が、本当に楽しみです。藤巻さんは哲学や思想に通じていますから(尊敬します!)、それが反映されて、より深みを増した歌詞の曲が聴けるんだろうなぁとか、バリエーション豊かに、自然や心情を鮮明に表現したメロディーの曲が聴けるんだろうなぁとか・・・とにかくワクワクしています。

 

 

生きる「指針」になるようなアルバムを生み出してくれて、ありがとうございます!という気持ちでいっぱいです。

*1:川瀬和也『ヘーゲル哲学に学ぶ考え抜く力』(光文社、2022年)