わんわん電鉄

好きな音楽は、鉄道の路線網のように広がっていくものだと思う

【考察・解釈】スピッツ『君は太陽』

久しぶりに【考察・解釈】シリーズを再開してみたいと思います。

今回は、スピッツの『君は太陽』を取り上げてみたいと思います。この曲は、アルバム『とげまる』に収録されています。

君は太陽

君は太陽

 

 

この曲は、映画『ホッタラケの島~遥と魔法の鏡~』の主題歌でした。明るくて、前向きになれる曲だと思います。

 

イントロの力強いギター音がとても素敵です。瑞々しさ、そして、みなぎるパワーが感じられるリフになっています。

 

 

「あきらめた」 つぶやいてみるけど
あきらめられないことがあったり

コレなんです。コレは、真理だと思います。

個人的なお話で恐縮ですが、今現在の私自身がまさにこの状態で、『やめたやめた!諦めたぞ!』と、口では言うものの、実際は諦めきれなくてウジウジしています。その度に、この曲のこの歌詞を思い出してしまいます。

 

人って意外と、諦めようとしているモノに対して強い愛着を持っているがために、そう簡単に諦めることができない場合が結構ありますよね…。

 

 

訳を知って なるほどそうかそうか
少ない知恵しぼって 小さくまとめたり

この曲の主人公は、何かを分析したり、背後にある物事を考えたりするのが好きなのかなあと、勝手に研究者の卵だと推測してしまいました笑  

 

「少ない知恵」という表現が、またマサムネさんらしく謙虚だなあと感じます。それとともに、この主人公は、自分をどこか過小評価してしまっているという感じがします。

 

 

 

でも 見すかされていたんだね
なぜか 君はくちびるをへの字にしてる

Bメロで、雨雲に突然覆われたかのような暗さのある曲調となっています。

 

ここの「君」とは、歌詞の通り「太陽」であり、さらに、主人公の情熱・本心・感情(⟷理性)なのではないかと推測します。

 

主人公は、とある事情から理性的に判断して、物事を諦めることにしながらも、その物事がやっぱり楽しいから、密かに小さく続けていた。けれどもそんな主人公の状況を、自分自身に潜む感情的には、あまり好ましくなかった、ということでしょうか。

 

主人公自身と一体化している(と主人公が感じている)のは、理性の方で、一方で自分の中で相反する存在として感情が存在しています。しかし、それは自分自身が押し殺しているかなにかによって、認知していない状況になっているのだと思います。

 

 

 

あふれ出しそうな よくわかんない気持ち
背中をぐっと押す手のひら
斜めった芝生を転がっていくのだ
止めたくない今の速度 ごめんなさい

一部界隈で『怖い』と言われている箇所ですが、私は、これについて、「君(太陽)」=自分の中の情熱や感情 がくれた何らかのパワーが、「手のひら」の力として象徴されているのではないかと思っています。物理的に「押した」というイメージは無いです笑

 

 

現状の主人公を見て、それは芳しくないと感じた君が、何らかのパワーをくれて、主人公はなんだか分からないけれども、前進しようとする、殻を破って外に出ようとする強い気持ちでいっぱいになっている状態を表している気がします。芝生を転がるというのも、そのパワーの強さを表すための比喩な気がします。

 

「止めたくない」と言い、そのことを「ごめんなさい」と謝るなんて、やはり主人公はとても謙虚な人なんだなあと思いました笑

個人的なイメージですが、主人公は誰かの意向によって物事を諦めていたけれど、君からパワーをもらって猛スピードで前進したことにより、『やっぱり諦めたくない!』と強い想いが沸いてきたという感じがします。

 

そして、伸びやかなメロディーが、主人公の気持ちや未来がグーッと開放されていく様子を表現している感じがします。

「ぐっと」の高音も本当に美しいですね。

 

 

 

理想の世界じゃないけど 大丈夫そうなんで

この歌詞がとても好きです。常に理想ではない世界にいながらも、こう言えるようになりたいなと強く思います。

 

自分の隠していた本心に従って進むと決めたとはいえ、みんなが皆、頑張る主人公を歓迎してくれて、主人公が精神的に屈折することなくひたすらに前進できるような「理想の世界」にいるわけではないのでしょう。(「理想の世界」にいるのであれば、自分の本心なんて押し殺す必要も、諦める必要もないのだと思います。)

やはり、本来であれば諦めざるを得ない厳しい世界であるということなのでしょうね。

 

 

「止めたくない~」は明るいのに、「ごめんなさい」を挟んで、少しここで暗ったくなりつつ、最後は開き直ったように明るくなるという曲調の変化の流れが、主人公の細かな感情の変化を表しているように感じられます。

 

 

 

 

 

渡れない 濁流を前にして
座って考えて闇にハマってる

1番にあったように、とりあえず自分の思う方へ進んでみようと決めてみたものの、早速つまずくことがあったということだと思います。

「闇」というのは、個人的推測ですが、主人公自身の心の闇のようなものだと思います。やっぱり諦めた方が良かっただろうか、それとも、これで良かったのだろうか……という感情の錯綜のようなものかと思います。

 

 

愛は 固く閉じていたけど
太陽 君は輝いて僕を開く

「太陽」が、理性的に押し殺していた自分の本心・感情だとすると、「愛」とは何を表しているのでしょうか。少なくとも、ここでは「太陽」に対置される存在であると思われます。 

自分の周りの人間の甘言(諦めた方がいいよ〜友人的立場を利用して唆す言葉?)なのでしょうか。

 

隠していた感情が、理性的に凝り固まった存在である「僕」を解きほぐしてくれたということなのでしょうね。

 

 

こぼれ落ちそうな 美しくない涙
だけどキラッとなるシナリオ
想像上のヒレで泳いでいくのだ
ヒリリと痛い昔の傷 夢じゃない  

明日憧れの岸に たどり着けるよ

主人公は迷ったり、躓いたりして、やっぱり辛いなと思い、涙がこぼれそうになる、というシチュエーションだと思います。

「美しくない涙」という書き方も独特ですね。やはり自己否定的な思考を持ってる「僕」なのだと思います。

 

凡人で、物語の主人公にはなれなそうな自分だけど、こういうときはキラッと光るはずだろうと想像して自分を鼓舞しているのかなあと思います。

 

まさに、「想像上のヒレで〜」からは、理想と現実(痛みを感じる傷も、夢じゃない)の狭間でもがき苦しみながらも、自分の本心に従って夢に向かって頑張る姿が描かれていると思います。

 

「昔の傷」ということは、やはりなにか一度失敗したことがあるのだと思います。だからこそ、一度は「諦めた」のでしょう。

 

 

色づいた 果実すっぱくて
ああ君は太陽 僕は迷わない
もう迷わない君と

Cメロ部分です。

「色づいた果実」ということは、主人公の努力が結実したということなのだと思います。「すっぱい」のは、やはり完全に理想通りではないということを表しているのかもしれませんが……。

 

この部分で、もう迷わずに自分のやりたいことを突き詰めていくぞ!と決心しているように思います。

 

このCメロ部分は、少し気だるそうに、スーッと伸びていくような感じで歌われています。個人的推測ですが、ここで歌われている感情や気持ちは、主人公の潜在意識の中(例えば、夢の中など)で語られているものなのかもしれません。

 

最後の大サビの前のギターが刻むリズムは、最後の大ジャンプに向けて助走をつけているような感じがして、爽快ですね。

 

 

・・・・・・

 

君は太陽』は、キラキラしたギターの音が綺麗で、夏に聴きたくなる1曲だと思います。

 

冒頭にも書きましたように、私自身も理性と感情の狭間で「自分は何をしたいのか?」についてとても迷ったことがあるので、この曲にはすごく感情移入してしまいます。